今回は、私が月数回施術に行っているIT企業にて出会った患者さんの症例です。学生時代に本場アメリカにてカイロプラクティックの施術を受けたことがあり、施術をきっかけに当院に来院されることになりました。
症状
毎日、長時間のPC作業を行っていたので数年前から慢性的に腰痛があった。日によって右腰が痛かったり左腰が痛かったりしていたがそれほどひどくなかった。1.2年前から左骨盤付近の限局した鈍痛に変わった。日によって痛みが強いこともあれば弱いこともあるが、消えたことはなかった。長時間同じ姿勢でいることがつらかった。また、そのころから左腹部の奥で鈍い痛みが出てきた。心配になって病院に行ったが、画像所見から特に異常なしという診断であった。姿勢が悪いことを自覚しており、たまに胸骨(胸部の肋骨と肋骨の間の骨)がパキと音がなる。運動は特にしていない。
検査
本人の訴える痛みは、左PSIS(上後腸骨棘)である。立位では顕著に左右の重心のバランスが崩れており、うつ伏せでは、左短下肢がある。また、腹部の痛みは左腸腰筋であり、触診すると圧痛があり、本人の訴える左腹部の鈍痛と一致する。股関節伸展の可動域が減少しており、左股関節伸展の動作にて左PSIS(本人の訴える痛みの場所)が痛む。また、骨盤の前傾後傾の動きが苦手であり、日頃から腰椎の屈曲・伸展の動きが極端に少ないので、連動した腹筋を使う意識が難しい。
デスクワークのせいなのか、不良姿勢であり頭部は前方にシフト、また胸椎の柔軟性が極端に少ない。肩も内に入り込み、大胸筋の緊張が強い。
施術
初回の施術
脊柱全体の柔軟性をゆっくり付けて、左仙腸関節の歪みを矯正した。これだけで、本人の訴える左骨盤付近の限局した痛みは大幅に軽減した。仰向けになり、左腹部の腸腰筋を緩めて、その後ゆっくりと左股関節伸展のストレッチを行った。施術前は同じ動作で左骨盤付近に痛みが出たが、矯正を行った後はそこまでの痛みはない。主訴は腰痛であるが、その原因は長期間の不良姿勢も影響しており、全体的な施術が必要であったので、肩甲骨の動きをしっかり付けて縮こまった胸筋のストレッチを行い、柔軟性のなくなった上部胸椎をゆっくり動かした。ここまでで座位で姿勢が正しやすくなったと感じている。最後に、頚椎の矯正を行って、肩挙上する筋(上部僧帽筋や肩甲挙筋)のストレッチを行った。
2回目の施術(5日後)
施術後、腰痛は取れたが週末(3日後)くらいから再発。教わったストレッチを行っているがまだ痛いとのこと。左仙腸関節の歪みは戻っていたので、初回同様の施術を行った。
3回目の施術(1週間後)
施術後は少しだるさがあったが、翌日には楽になり腰痛を感じることはなかったが、施術から4日後に再発。一番つらい時が10とすると現在は5くらいの痛み、もとよりは痛みは半減している状態であった。左仙腸関節に加えて腰仙部の歪みを矯正した。左の腸腰筋は以前のような緊張はなく、本人の腹部奥の鈍痛も消失していた。
4回目の施術(1週間後)
腰痛はなくなり違和感に変わった。違和感も気にならないときもある。仙腸関節の歪みもなく、圧痛の消失しているが、姿勢改善・再発防止のために継続した施術を行うことにする。
股関節伸展のストレッチに加え、骨盤の前傾・後傾のエクササイズ・姿勢改善の為の体幹トレーニングを指導した。
現在も定期的な施術を行っている。
結果
この方の場合は、長期間腰痛をそのままにしていたことで骨盤の歪みを招いた事が痛みの原因でした。骨盤の歪みは癖ついていたので、一度の矯正では改善されず何度も悪い状態へ戻っていました。また、腹部の痛みは一見臓器の問題に思われがちですが、この方のような腸腰筋という腰椎と骨盤から股関節をまたいで大腿骨に付着する筋肉の問題ということもあります。長時間のデスクワークによって少しづつ姿勢が崩れ、関節(骨盤)や筋肉(腸腰筋)に負担をかけたのでしょう。
今回、腰だけの施術ではなく、全身的な施術を行いました。肩甲骨の動きを整えたり、背骨(胸椎)の動きを高めたり、一見腰痛と関係ないように見えますが、正しい姿勢を取りやすくするためにはとても大切な部分であり、また腰の負担を取り除くためにも重要です。症状がなくなった後もストレッチやエクササイズを指導していますが、もともと運動を全くされていませんでしたが、自身の身体への理解が意欲的な運動へつながっています。根本的に改善させるためには、全身的に捉えることがとても大切であり、そこがカイロプラクティックの良さでもあります。
産前産後の女性を対象とするエクサイズに興味を持ち、ピラティスインストラクターの資格も取得。WHO基準カイロプラクターとして、より効果が高く持続する独自のケアメソッドを提供しています。一児の母。